女性化乳房の医学

● 女性化乳房とは?

男性が、女性のような乳房の発育(乳房組織の隆起)を見る場合、これを女性化乳房(Gynecomastia)と呼びます。両側の方もいれば片側の場合もあり、また、その隆起もまちまちです。そして男性の乳腺や乳房は女性のように発育しないが、ときに病的に乳輪直下にシコリや、 痛みを感じることがあります。 そして医学的には女性化乳房の治療は乳癌治療と異なり生命に関わらないことからあまり熱心に行われていないのが現状です。 男性の女性化乳房には、思春期の生理的な変化によるもの(思春期の男児の60%程度に一時的にみられるもので、心配のいらないもの)、 男性の更年期に生じるもの、肝障害、副腎、甲状腺、泌尿器など等による内分泌や代謝異常によるもの、薬によるもの等があります(下記に列記)。薬剤によるものは、 そのうちのおよそ20〜30%程度であろうといわれています。 また分類として乳腺(おっぱいができる部分)自体が発達した場合(真性女性化乳房)と、単に太って脂肪がついた結果胸が膨らんでしまった場合(偽性女性化乳房)があります。 これらの女性化乳房は軽度であることが多いので、あまり心配いらないことが多いのですが、男性乳癌や他の内分泌系疾患との鑑別を行う必要があります。 また、薬剤が原因であれば、女性化乳房を誘発しない替りの薬剤があるかどうかなどを判断する必要があります。早々に処方医にその旨伝えて下さい。 たいていの場合、薬剤を中止すると1〜3ヵ月で治るようです。

●「女性化乳房」を引き起こすことが知られている薬

抗潰瘍薬(ドグマチール、H2ブロッカー = タガメット、ガスター) ホルモン製剤(女性ホルモン剤)、あるいはその拮抗薬(前立腺治療薬など)、 強心薬(ジギタリス)  降圧利尿剤(スピノロラクトン = アルダクトンA)、降圧剤(レセルピン、メチルドパ、ニフェジピン = アダラート) カルシウム拮抗剤、 抗真菌剤(グリセオフルビン) 向精神薬(デパス、ドグマチール)  抗テンカン・抗けいれん薬(フェニトイン、カルバマゼピン)、 抗ガン剤、 抗結核薬(イソニアジド) 抗アレルギー薬(オキサトミド) 胃腸運動賦活薬(ナウゼリン、プリンペラン) 気管支拡張剤 吸入薬

●男性ホルモンを投与しても女性化乳房になる?

男性ホルモン製剤・蛋白同化ステロイド(アナボリックステロイド)を使用したときに副作用として女性化乳房が生じることがあります。これは男性ホルモンであるテストステロンが女性ホルモンの代表であるエストラジオールに変換(アロマタイゼーション)することによります。 男性ホルモン製剤・蛋白同化ステロイドを投与するとその変換率が高まりこれらの薬剤からもエストラジオールに変換されるので男性ホルモン製剤・蛋白同化ステロイドを投与したのに女性化するのです。これは乳房のみならず精神的にも女性化したりうつ的となり得ます。

●女性化乳房の手術

薬剤性のものは原因薬剤の中止が原則ですが、疾病により薬剤を止められなかったり、原因不明で保存的に改善の余地がない場合、本人が望めば手術となります。 ○真性女性化乳房手術/乳腺脂肪切除法 乳輪の下半分の外縁を切開して、ここから乳腺組織と脂肪を摘除します。 硬膜外麻酔が順当でしょう。、手術のはじめから終わりまで無痛でできるものです。 術後は、切除した部分の組織を圧着するため、最初は専用の厚手の幅広の包帯、途中からバストバンド(胸部圧迫帯)を使用します。 術後は、直接患部に衝撃がなければ普段の生活は当日より可能です。 術後翌日(検診にてドレーン抜去)、1週間後、抜糸と検診で通院が必要です。 術後翌々日からシャワー可。1週間後からは入浴可です。 バストバンドは術後約1ヵ月着用します。 ○偽性女性化乳房手術/脂肪吸引法 女性化乳房の立ち上がりの部分から(通常乳房下縁)に約3mm切開、皮膚保護外套をつけた上で、細めの脂肪吸引用カニューレを入れて脂肪を吸引します。 麻酔および術後の事は真性女性化乳房手術の時と同じです。